伝統料理は炊き込みご飯。胃腸を整える酸味の強いヨーグルトドリンク

これまで私たちが実際に体験してきたカシュガイ遊牧民のおもてなしのスタイルを整理してみよう。
テヘラン在住の絨毯商ファーハディアンを頂点に、シラーズ周辺に拠点を持ちギャッベを扱う仲介者(コントローラー)、そしてギャッベを織るカシュガイ遊牧民の3者がいてギャッベビジネスが成り立っている。それぞれに利害関係があり、客人のおもてなしの仕方にも差があるように感じられる。
私たちはギャッベを買う立場にあること、また、カシュガイ族の文化を日本に伝える、ギャッベの広報的な役割を果たすことから、3者共通の客人ということになる。
そのため、カシュガイ遊牧民の元を訪れると、いつでも最高のおもてなしを受けていると感じる。
2019年の9月の取材の時は、私たちが取材している場所に、村に住むコントローラーの奥さんが、自分の家のキッチンで作った伝統料理を運び、ふるまってくれた。こういう時はとても豪華で品数の多い昼食になり、テント生活をしているカシュガイ遊牧民のふだんの昼食とは似て非なるものになる。調理に手間をかけられるのは、村に住むある程度裕福な生活ができる人たちであり、原野ではもっとシンプルで質素。
この時のメインは羊肉の炊き込みご飯「ブシュナイアポロ」。これは定番のおもてなし料理。薄い塩味で羊肉がそんなにたっぷり入っているわけではないが、長粒米のご飯でおなかを満たすといった感じだろうか。さらに、別にもう一品、羊肉ミンチとキャベツの炊き込みご飯「キャランポロ」がサービスされた。炊き込みご飯を2種類作るなどというのは、相当に力の入ったおもてなしなのだ。濃厚なヨーグルトスープにはキャベツが煮込んであり、ナンとの相性がよい塩味であった。
そのほか飲み物として、酸味の強い、乾燥ハーブが入ったヨーグルトドリンク「アシェドウ」が必ず出る。おなかの調子を整えるということで、これをカシュガイの人たちはよく飲む。市販品もあるが、その家独自のアシェドウを幾度となく経験した。


『大地の絨毯 GABBEH』
カシュガイ遊牧民・
草木染め手織り絨毯
フォトグラファー向村春樹氏が20年にわたり現地を取材したギャッベの世界を紀行文として執筆された待望の新刊です
- 全192ページ オールカラー
- サイズ:19.5 X 25.4 cm
- 発行元:ART G PUBLISHING
向村春樹著
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ギャラリー価格 ¥4,000
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