ギャッベの糸。絨毯用羊毛の品質は その輝きと しなやかさにある

カミヤランの町中にある糸屋さんザヘッド・ホラソンさんが、父親のモハマッドさんのいる仕事場に案内してくれた。周辺のクルドの村で手紡ぎされた糸が集荷されて、足の踏み場もないほどに毛糸玉で埋め尽くされた仕事場。糸玉は綛かせ糸いとに姿を変え、等級ごとに仕分けされて出荷されていく。この地方の糸は主にペルシャ絨毯に使われているという。最盛期に50軒ぐらいあった糸屋も今は4〜5軒を残すだけ、ペルシャ絨毯の時代は去ったのだ。
ファーハディアンは上級クラスのギャッベに使用するウール糸はホラソンさんの店から購入している。ファーハディアンの糸選びは非常に厳しく、床に所狭しと転がっている糸の中でも、選ぶのはほんの一握りだと話す。
写真に写っている糸玉の大半は、安価な絨毯を扱う絨毯商に引き取られていくのだそうだ。ファーハディアンが使う糸は、一頭の羊から刈られる羊毛の中からわずか20%しか取れない脇腹の部分の毛。その中でもさらに柔らかく、弾力があるものだけを選別して買い付ける。最上質な糸は染めずに生成りのまま使う。
私たちは今まで、ギャッベの糸は細ければ細いほど上質であると教わってきたが、クルドウールの取材をしていく中で、しなやかで弾力があり、極限まで引き伸ばしても破断しない、強靭なウール糸、輝きを放つ糸こそが最上質であると、再認識させられた。
ホマイオン氏に尋ねた「この中でどの糸が満足できる糸か」と。彼は迷うことなく「Brillian(t輝いている)」とつぶやきながら、2つの糸玉を選び、私に手渡してくれた。そのウール糸の艶やかさを、しっかり網膜に焼き付けた。


『大地の絨毯 GABBEH』
カシュガイ遊牧民・
草木染め手織り絨毯
フォトグラファー向村春樹氏が20年にわたり現地を取材したギャッベの世界を紀行文として執筆された待望の新刊です
- 全192ページ オールカラー
- サイズ:19.5 X 25.4 cm
- 発行元:ART G PUBLISHING
向村春樹著
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ギャラリー価格 ¥4,000
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