About GABBEH

「大地の絨毯」ギャッベとは

広大な原野に、丁寧に織られた
伝統模様の絨毯を敷く。
無骨な荒々しい原野にも、
美しい草原にも、
決して負けない存在感。
魂のこもった
手仕事は力強く、尊い。

家族への思いが文様に込めれた
「はじめてなのに懐かしさのある絨毯」

イランのカシュガイ遊牧民が織る手織り絨毯をギャッベと呼びます。Gabbehという言葉は、トルコ語系のペルシャ語を話す彼らの言葉で「織り目の荒い敷物」を意味します。
ギャッベを織るカシュガイ族の女性は、結婚するときに、
自分が織った2枚から3枚のギャッベを花嫁道具として持って嫁ぎます。女性は、この絨毯の上で過ごす家族の幸せを願う文様を、ギャッベに織り込むのです。
「遊牧民の誇りを忘れずに生きていけますように」「水に困りませんように」「子どもに恵まれますように」。ひとつひとつの文様がそんな願いを込めた文様です。
家族を思う気持ちは、どんな時代もどこに住んでいる人でも共通な思いです。ギャッベに初めて出会った人が「初めてなのに、なぜか懐かしいように感じる」のも、そんなギャッベの成り立ちからきているのかもしれません。

フリーダム精神が織り上げる
世界で1枚だけの手織り絨毯

ギャッベを織るカシュガイ遊牧民の人たちは、イラン南部の都市シラーズ周辺の高原に暮らしています。カシュガイの長老が語るには、彼らを支える精神は「フリーダム」。拘束を嫌い、自由な精神世界に生きる誇り高い人たちだといいます。
今、ギャッベのデザインや文様は、ある程度、絨毯商が決めて、彼女たちに依頼する形で生産されるものが多いのですが、同じデザイン画を渡されても、
彼女たちはフリーダム精神から、ほかの人と同じものは作りません。自分の感性や思いを込めて、誰よりも素晴らしい絨毯を織るのです。世界でただ1枚の手織り絨毯の誕生です。

ギャッベのパイオニアとして、
唯一無二のギャッベギャラリー

高原アートギャラリー八ヶ岳は、ギャッベコンシェルジェである、向村館長が、イラン現地まで実際に足を運び、ギャッベ歴20年の経験とカメラマン・編集者としての、本物を見極める目利き力で、唯一無二の本物のギャッベコレクションです。

日本ではギャッベ愛好家に圧倒的な品質と知識でご評価いただいております。
同じ商品はない、ここでしか見れない絨毯の中から、お客様の感性にフィットする一枚をお選びいただけます。


日本国内には現在、さまざまなレベルのギャッベが出回っていますが、カシュガイ遊牧民とジュータン商がコラボレートして作る新作の「プロデュースギャッベ」において、最高品質を誇るファーハディアン社のプレミアム・ギャッベをお客様にご紹介いたします。

アクセス

ギャッベの数あるモチーフの中でも、一番の人気は生命の樹。
見渡す限りの大草原に凛として立つ大樹は神秘的で「天国への階段」といわれます。

ギャッベで、⽣命の樹にザクロがたわわに実った⽂様は、⼦孫繁栄、豊穣を意味し、縁起の良い絵柄と考えられます。
ぎっしりと詰まった実からあふれる果汁と共に、縁起の良い果物とされています。

この四⾓形は、⽔をたたえた井⼾を表しています。命を繋いでいく⽔は、⼈間だけでなく、⼤切な財産を意味します。
井⼾の⽂様の四角形の中に⽺や⽣命の樹、⼈を配置しているものを多く見かけます。

可愛らしいモチーフの動物と人シリーズは、子孫繁栄、子宝を意味するファミリーにも人気の文様です。
家族を作り、子供を育てるカシュガイ族の女性の母性豊かな心情が表現されています。

ギャッベにおいてライオンギャッベは⾮常に重要な位置を占めます。
イランがペルシャと呼ばれていた古い時代から、ライオンは王の象徴とされ、強くたくましい存在として尊ばれてきました。

カシュガイ遊牧民の中で代々受け継がれ、織られてきた伝統的文様のギャッベ

ギャッベの基礎知識

カシュガイ遊牧民5部族とは

毎年カシュガイ遊牧民の元へ通って20年、多い年は1年に3回出かけることもある。その年ごとに取材のテーマが違い、取材先のアレンジをお願いするときに部族名まで指定することはないので、「カシュガイ族」として、多くの部族に会ってきた。
全体的な印象としては、カシュガイ遊牧民は柔らかな発想力を持ち、周囲の文化を吸収していく柔軟性を持つ民族だと感じている。
大きく分けてアマレ、ダルシェリ、カシュクリ、シシブルキ、フェルシマダンの5部族からなる連合体である。
「一番のギャッベの織り手はどの部族か」と聞くと、アマレに聞けばアマレが一番、シシブルキに聞けばシシブルキが一番と答える。それぞれの部族が誇りを持ち、時には競い合い、時には協力し合って生き抜いてきたに違いない。
カシュガイ女性はシャイな性格の人が多い。特に良きギャッベの織り手の女性は、宗教上のこともあるが、見知らぬ男の前にはそうそう「ふだんの姿」を現さない。
彼女たちと日本人の私とをつなぐのは一枚のギャッベ。自分の織るギャッベに尊厳を払い、遠い日本で広め売ってくれている日本人の私を同じ仲間として受け入れてくれる。カシュガイ遊牧民の暮らす大地では、ギャッベは信頼関係の絆でもある。仲間としていったん認めてくれれば、これほど情の深い人たちはいない。

柔軟性ある気質、最大勢力 アマレ族

カシュガイ遊牧民の中で最大勢力がアマレ族。ギャッベの生産枚数も多く、融通がきく多様性を持つ人が多いと感じる。絨毯商の意向を理解し、発注を受けて織られるギャッベの品質も良い。アマレの伝統文様は2頭のライオンと、正面を向いた羊を入れたもの、天地に大きく「矢じり」をイメージした文様は、未知の世界の憧れと好奇心を表す。
アマレ族の織るギャッベには馬をモチーフにしたものも見かける。遠い昔、イラン高原を騎馬戦士として駆け巡っていたころの記憶なのか、躍動感のある馬の絵柄で表情は優しげなものが多い。遊牧民の家長が誇らしげに乗馬している姿に出会うと、その威厳に感動してしまう。 アマレ族に限ったことではないが、一般的に良いギャッベの織り手の女性は婚期が遅れる場合が多いと聞いた。良き織り手は家族の経済を支える大黒柱として、親が手放さないのだ。

家族意識の強い ダルシェリ族

ダルシェリ族は教育熱心な部族という印象がある。家族間の絆も強く、私の取材したダルシェリ族の家族は、飼育する羊や山羊の数が約200頭と多く、カシュガイ族の平均を上回る数であった。躍動感のある「ダルシェリライオン」のデザインが有名。それに馬や鳥の雉きじなどの文様が四隅に織り込まれるのが特徴的。
ある時、ダルシェリ族の家族をサラハットで取材中に、イスファーハン大学で法律を勉強中の娘さんが帰郷して、カシュガイの民族衣装を身に着けて撮影に参加してくれたことがある。将来は弁護士になると話していた女性の表情にも、ダルシェリ族であることの誇りが満ち満ちていた。
ダルシェリ族の家族意識は、 部族の中では群を抜いて強い。 教育熱心な遊牧民だけに、子どもたちの多くは親から離れて村に住み、より充実した学校に通うようである。牧畜農業(羊毛、食肉生産)を中心にした生活で、ギャッベからの現金収入だけに依存しているふうではないように思えた。

プライド高きカシュクリ族

プライドの高い人たちだなとの印象が強いのがカシュクリ族の人たち。ギャッベを織っているときの集中力は高く、一種のトランス状態に入っているようにも見える。
撮影している私を一切無視して織り続ける女性もいた。ギャッベの織り手としてはカシュガイの中で一番といわれ、紀元前から伝承されている生命の街の文様を大胆に織り込んだキャッベや、菱形の文様トランジが3連に連なったデザインが魅力的。
トランジ文様はカシュガイ遊牧民が最も大切に扱うもので、遊牧民の精神世界、誇り高いアイデンティティを表す文様である。現在、商業目的に織られるキャッベには、生命の欄とトランジ文様がよく見られる。
キャッベには太い糸を使用した普及品から、精緻に綴られた品質の高い上級クラスまであるが、カシュクリ族の織り手は技術が高いことから、上級クラスのキャッベを生産する人が多いようだ。

人柄の良さがしみ出る シシブルキ族

5部族の中で最も人柄の良さを感じるのがシシブルキ族。伝統的絵柄の「シシブルキライオン」は、間抜け顔の2頭のライオンが向き合う、力の抜けたほのぼのとした感じが魅力のギャッベ。ライオンは力のシンボル。ライオンの心を持った勇気ある優しい人間を表す絵柄で、我々のギャラリーでも人気が高い。
5部族の中では一番の質素な生活ぶりで夫婦仲も良く、まさに「足るを知る生活」を営んでいる人たち。私が最も好きな部族といっても過言ではない。カシュガイ遊牧民居住エリアでも一番西側の乾燥した原野に多く暮らしている。日本人が遊牧民としてイメージする「原野に羊を追い、飄然と歩く遊牧民」にこの上なく近い人たちではないかと思う。
特に 「シシブルキライオン」のオールド(50~70年くらい前に織られたもの)には魅力的な逸品が多く見られる。ギャッベは精緻なものだけが尊ばれるとは限らない。未完成のギャッベとでも呼びたくなる、ほのぼのとした作り手の人柄を連想できるシシブルキ族のギャッベに、私は一層の魅力を感じる。

平織りのキリムにセンスが 光る
フェルシマダン族

フェルシマダン族は、カシュガイの中では定住化が早くから進み、多くがカザルーン周辺の村に暮らしている。5部族の中では垢抜けたセンスを持ち、定住化という新しい風を早く取り入れるような気質のある部族だと感じる。織物に関していえば、もちろんギャッベも織るのだが、むしろ得意とするのは、モダンな平織りのキリム。
特に絨毯商とのコラボから生産されたキリムは、北欧風なインテリアにもマッチするハイセンスなできばえで、昔から織られていた伝統的なカシュガイキリムとは一線を画するものである。このカシュガイ遊牧民5部族のほかにも、イラン南部にはルリ族や、カムセ連合と呼ばれる定住遊牧民の人たちが暮らしている。ルリ族は先史時代からこの土地で暮らしている人たちで、非常に自由で芸術性に富んだ絵柄の魅力的なギャッベを織る。かたやカムセ連合はアラブ系遊牧民で、細やかな図案でも正確に根気よく、精緻なギャッベを織ることができる。
ギャッベの市場では、織り手がどの部族に属しているかまで表記されることはなく、全て「カシュガイ遊牧民」と表記されて販売されるのが現状である。私たちの好みははっきりしており、フリーダムの精神が今も根強く残っているカシュガイ族のギャッベが、カムセ連合の織る精緻なギャッベよりも、数段魅力的だと思っている。