ジュリ・ミルダバーグ(エストニア) 感情を揺さぶる機微とユーモア

ジュリ・ミルダバーグ

1965年エストニアの首都タリンに生まれる。有名な画家を父にもち、そのアトリエで成長。現在は、エストニアの国有林の懐、緑豊かな自然の中に家を構え、やはり絵描きである妻と1匹の愛犬とともに住んで、次々に意欲的な作品を生み出している。最近は好んで、古木をキャンバスにして描く。IBBY(国際児童図書評議会)の名誉あるリストに、エストニアのアーティストとして、ただ一人名を連ね、国を代表する画家として、切手にも絵が使われている。

2015年夏にヘルシンキにオープンしたLilla Robertsというホテルでも、各客室の壁に、ミルダバーグのシルクスクリーンが選ばれるなど、フィンランドでの人気は盤石。

 フィンランドの首都ヘルシンキに、この夏オープンしたホテル「F6」 。ブティックホテルあるいはデザイナーズホテルとよばれる、おしゃれなホテルのレセプションの壁を飾るのは、ミルダの新作「幸福をう人々」のプリントである。

 実は、この作品、高原アートギャラリーが2016年の夏の展示用に買い取り、6月初めには日本に届いていた。見た瞬間、私がつけたタイトルが「幸福をう人々」 。不思議で愉快なこの絵を飽きずに眺めていた矢先、ミルダバーグの代理人であるテッポ氏から、写真撮りしてそれをホテルのレセプションに使わせてほしいと、たっての要望があり、我われもその楽しい目論見に協力することとなった。

 「ほら、あの不思議な絵のあるヘルシンキのホテル」。人びとの旅の記憶に強烈に刻みこまれるであろうミルダの絵。そんな想像をするだに楽しい。

 よくよく考えれば、「今年のミルダこそ、最高だね」と、毎年同じ会話を繰り返している。

 ユーモラスなのに辛辣、愉快なのに寂しげ、繊細かと思えば大胆……。摩訶不思議な魅力を放つ彼の絵に、今年もまたタイトルをつける作業を満喫している。 



作品はこちら